Tecの路地

現役理系大学生が、趣味のこと、ガジェットレビュー、写真、お気に入りのお店などについて、雑記的に記していくブログ。

イヤホンリケーブルと音の変化|認めざるを得なくなった話

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以前、「イヤホンリケーブルの罠|ケーブルで音は変わらない。」という記事を書いた。
この時はもろもろの知識が足りず、少しケーブルの材質が変化した程度で音なんか変わんないだろと思っていた。
実際に僕自身、イヤホンリケーブルでの音の変化を感じたことは無かったし、リケーブル、信じるに足らず!って感じだった。

が、先日ある事実を知ってしまった以上、リケーブルによる音の変化を認めざるを得なくなったので、この記事を書くに至った次第だ。

イヤホンにはインピーダンス特性というものがあるのはご存じだろうか。
インピーダンス特性というのは、 "そのイヤホンの周波数の値に対する抵抗値" のことだ。

何故ケーブルで音が変わるかを言うより先に、まずインピーダンス特性の知識を知ってほしい。

以下に例としていくつかの有名なイヤホンのインピーダンス特性を示したグラフを貼る。
なおデータはイヤホン測定結果置き場様から引用させて頂く。

インピーダンス特性を見比べてみる対象として、DD、BAそれぞれ見てみよう。
DDはSHUREのSE215、BAはEtymotic ResearchのER4PTだ。

DD:SE215

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グラフの縦軸が抵抗値 (Ω)、横軸が周波数 (Hz)だ。
横軸が対数グラフになっていることに注意しよう。

さて、見てもらえばわかる通り、ほぼ一直線で大きな抵抗の変化はない。
2200 Hzと5000 Hzにちょっとだけピークがあるけどさほど大きなものではない。

これに対してBAは...

BA:ER4PT

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1000 Hzを超えたあたりから大きく抵抗値が上昇しているのがわかるだろう。

ここで、出力側の抵抗値が大きければ、インピーダンス特性の影響を受けやすくなる
※出力側の抵抗というのは電気信号がイヤホンのドライバにたどり着くまでの抵抗の合計値と考える。

例えば、上のER4PTの場合、DAPとケーブルの抵抗値の合計が大きければ大きいほど、1000 Hz以上の周波数で音が大きくなる、つまり高域がより前に出てくることになる。
逆に抵抗値が低いほどインピーダンス特性の影響を受けにくいので、音はイヤホン本来のモノとなる。

でもDDつまりSE215のようなイヤホンではインピーダンス特性が明らかに平坦なのでDAPとケーブルの抵抗値の合計が大きくても、音に変化はない(限りなく小さい変化であるため聞き取れない)。

さて、ここまではイヤホンのドライバ自体のことを話した。
ここからはケーブルの話。
イヤホンリケーブル用のケーブルには一般的に銅、銀、金が用いられる。
それぞれの線材の抵抗値は、銀<銅<<金といった感じかな。

ネットのレビューなどでは、一般的に「銀は音が滑らかになり高域がきらびやかになる」、「銅は芯の太い力強い音」と言われることが多い。

金については主に端子やケーブルのメッキに使われているので今回はひとまず除外。
もしかしたら後日記事を書くかも。

上のグラフとこのことを考えるに、ケーブルに銀を使うとBAイヤホンのようにインピーダンス特性に極端な偏りがあるイヤホンに限り、抵抗値が高い周波数帯域において、わずかに音が小さくなると考えられる。

つまり、上のER4PT(リケーブルは対応してないけど)を銀線にリケーブルした場合、高域が大人しくなった、と感じるだろう。
高域の音量がわずかに小さくなることで、音が滑らかに感じ、高域がほんの少し引っ込むことできらびやかに感じるかもしれない。

逆に銅は銀に比べて高域の音量がほんの少し大きくなるので、音のエッジが立ち、鋭くなるので、高域が鋭く感じる分、低域の楽器のエッジが立ち、力強く感じるのかも。

ただし、これは、ER4PTのインピーダンス特性を考えた場合。

じゃあ、他のマルチBAとかだとどうなんだろうか?
イヤホン測定結果置き場様より、Creative AURVANA In-Ear3のインピーダンス特性図を引用する。
このイヤホンは2BAなのでインピーダンス特性にはいくらかの乱れがある。

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と、このグラフを見るとわかる通り、1000 Hz付近が大きく持ち上がっており、7000 Hz辺りは落ち込んでいる。
このことから、抵抗の小さい銀線などのケーブルを使う分には問題ないのだけど、銅線に金メッキなんかしてケーブルの抵抗値を大きくすると、1000 Hz付近が大きく感じられ、ちょっとボケた音になる気がする。

所で、ノイズ除去などに使われるアッテネータ(抵抗入りケーブル)というものがある。
DDイヤホンであればインピーダンス特性が平坦であるため、純粋にノイズ除去に使える。
しかし、BAイヤホンの場合、インピーダンス特性が持ち上がっているところが、リケーブルの比じゃないほど明らかに音量が大きくなるので、BAイヤホンにアッテネータは使わないほうが良いだろう。

ケーブルによる抵抗の変化は微々たるものだけど、アッテネータは抵抗を意図的に足しているので、BAイヤホンへの影響は大きすぎる。


結論としては、インピーダンス特性の平坦なDDイヤホンは人間が聞き取れるレベルでの変化はない。
インピーダンス特性に偏りがあるBAイヤホンなら、変化を聞き取れるかも?

ただ個人的には、ぶっちゃけイヤホンの開発者は、そのイヤホンに付属のケーブルをリファレンスケーブルとして開発しているから、エンジニアが意図した音を聞くにはリケーブルなんかしないほうが良いと思う。
デザインが好きとか、取り回しがとかならしょうがないけど。

MMCXや2pin端子が壊れる確率の方が、普段使いでイヤホンケーブルが断線する確率よりも高いだろうし、それなら端からリケーブルできないイヤホンを買った方が、真にそのイヤホンの音と向き合えると思う。


最後にこの記事を書くまでに様々なサイトを参考にさせて頂いたので、紹介をば。
イヤホン測定結果置き場

Data Library

【まとめ】中華イヤホン&ヘッドホンとDAPレビュー辛口のオススメ

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